暮浪夕時の月イチ三番勝負
どうも初めまして。当方、東大落研には一方ならず恩義を受けた身でありますところのエロライター志願、暮浪夕時(クレナミユウジ)と申します。かねてから、松岡君には「コラムを書いてみないか」という打診を受けておりまして、それがこうした形で実現することとなったわけでございます。
では、簡単に趣旨の説明をば。表題にございます通り、月に一度の連載を目指しておりますが、「三番勝負」と申しますのは、ズバリ「マンガ三番勝負」であります。つまり、適当に最近発売された(らしき)マンガを三冊買ってきて、暮浪として他人に勧められる程度に面白ければ「勝ち」、そうでなければ「負け」という、至ってシンプルな勝負なのですね。ちなみに、評価基準としては、性癖・嗜好が不明確な相手十人中五人くらいに「とりあえず無難」という程度で勧められるような、というつもりで考えております。悪しからず。
ただし、暮浪はどこまでいってもエロライター。ならば、当欄で取り上げられるべきマンガも、やはり「エロマンガ」であるべきです……ということで、18歳未満の少年少女の方々は、どんなに面白そうでも条例の都合で買えなかったりはするのですが、そこは勘弁して下さい松岡君。自腹でマンガ買ってるしノーギャラなんだし。
(この企画は好評のうちに終了しました)
- 第一回2000年2月
- 『少女の乳房は密かに膨らむ』(松原香織、東京三世社)
『本気汁の女達 獲物』(高松誠人、桜桃書房)
『ヴィシャス』(影崎夕那、コアマガジン) - 第二回2000年3月
- 『Deep Trip』(広川浩一郎、司書房)
『さんま』(目黒三吉、シュベール出版)
『触れていて。』(凪妖女、オークラ出版) - 第三回2000年4月
- 『快感フルーツ』(河野シンタロヲ、桃園書房)
『ORIGINAL2』(山田太郎(仮名)、文苑堂)
『ウラ23区』(香愁、三和出版) - 第四回2000年5月
- 『大天使の剣』(納都花丸、メディアックス)
『秘めごと』(田中ユタカ、雄出版)
『奉仕令嬢』(鹿島田しき、松文館) - 第五回2000年9月
- 『蝶美』(けんたろう、司書房)
『扉をコジあけて』(ZERRY藤尾、笠倉出版社)
『PALLADIUM GARDEN』(的良みらん、ヒット出版社)
第一回
それでは第一回いってみましょう。
『少女の乳房は密かに膨らむ』(松原香織、東京三世社)
『本気汁の女達 獲物』(高松誠人、桜桃書房)
『ヴィシャス』(影崎夕那、コアマガジン)
一本目
まず、『少女の乳房は~』。短編として、他人に勧められる水準に達していると思われるのは、ひとまず「裏返しの構図」と「リディア風の4度」。冒頭の「SWEET SKILL」シリーズ計4編は、少々絵柄が安定していないのが減点材料。さらに、主人公は確かにまあまあ動かせているが、その友人および姉との関わりが主人公の視点から、しかも肉体関係を中心にしか描かれていない印象を受ける。結果、あまりキャラが立っていない感じを受けたのだと思うのだが。この他の短編は、総じて言えば、方法論に寄りかかり過ぎているのでは、と思う。もう少し意図的に「ベタ」な展開を織り交ぜることを考えていかなければ、短編集としては読みづらいものに仕上がってしまうものだ、と思うのだが。
ということで、暮浪の負け。
二本目
次、『本気汁の~』。松岡君の弟は「ブルーカラー向け」のエロ漫画が大好きなので、多少はバランスを考えなければイカンかな……と思っていた矢先に目にしたこの一冊、タイトルにつられて思わず購入。で、内容ですが。「キレた」キャラクター達がサディスティックに展開する性行為の数々、とまとめてしまえるくらいに、上の一冊とは対照的に、全編通してベタな展開一本槍。個人的には、こういうのも嫌いではない。それでいて巻末のオマケが見た目に可愛い感じというのもかなり謎だが。ただ、悪くはないけど、今の段階では、他人に勧められるほど面白いとは言い難いかな、と。例えば、「キレ方」のヴァリエーションが乏しい辺り、ガジェットがいささか不足しているのでは?こういうのは、自己の精進以上に、しっかりした編集に教育を施してもらえるか、という巡り合わせの問題でもあるので、これからブレイクできるかどうかは明言を避けたいところ。可能性はある、という程度の表現でご容赦。
ということで、またも暮浪の負け。
三本目
最後が『ヴィシャス』。濃い目でしかも安定している絵柄は、好みは別れるかもしれないが、とりあえず古臭い感じはしないので、安心して勧められる。ストーリー構成も、いささかダーク系の作品に偏り過ぎているきらいは有るものの、悪くはないかと。ただ、この影崎女史、アップ系のノリの作品とダウン系のそれとでは相当に落差がある上に、その割合もほぼ半々、という点が特徴。同人誌でもそうだから、なおさら面白いんですけどね。だから、例えば前作の『ヴァンパイア猫娘騒動譚』(だったと思う)の方が、むしろ万人受けするとは思うけれども、影崎作品への導入としてはこちらも勧められる出来ではある。青年誌でもブレイクしつつある作家なので、マンガ読みを自認する貴方/貴女なら、チェックしておいても損はないのでは?
ということで、暮浪の勝ち。
総評:一勝二敗(通算:一勝二敗)
あまりぱっとした作品がなかったかな、というのが正直な感想。本屋の店頭で選ぶ際に、実は結構困ってしまった。まあ、最初ぐらいはこれでも良いかな、と思いたいが……
第二回
さて、始める前に前回の反響(←無いも同然だったが)など。「勝ち負けの基準ってどうなってるの?」という質問があったのですが、「書いてるんだからちゃんと読め」って感じですね。まあ、そもそも「月に三冊」の選択権は私にあるので(それが不満なら「ホットミルク(コアマガジン)」の「コミックジャンキーズ」でも読んでろ)、「私自身にとって面白いかどうか」を「勝ち負け」の基準にした時点で「出来レース」ってことになってしまいます。そんな自己完結した文章を世に問うても無意味なので、「他人に勧められるという前提で許せるか否か」を基準として採用したわけですな。ここら辺、良く伝わらなかった方がいらっしゃるようなので、いちおう補足しておく次第。では早速。
『Deep Trip』(広川浩一郎、司書房)
『さんま』(目黒三吉、シュベール出版)
『触れていて。』(凪妖女、オークラ出版)
一本目
まず『Deep Trip』。ダーク系からアッパー系まで取り揃えて、作者の「色」を幅広く見せようとしているのだろうけど、どちらの方向でもパワー不足というか。もう少し両極端へと振り切れた作品が読みたい、と思っているのは私だけではないはず。見慣れた設定をそのまま展開させる、すなわち「ベタ」も悪いことではないが、もう少し話をヒネッて転がさないと、今の水準で落着いてしまうのじゃないかという気も。まだ単行本は三冊目、安定するには早いだろう。「Men'sドルフィン」の第一号に載っていたネタで、確か「ネタが切れすぎるので」ギャグものを描かせてもらえなくなったとか。そりゃ大間違いでしょう。短編で良いから描かせる場を確保するのが編集の仕事なのでは?ギャグネタはいずれ枯渇するんだし、それなら腐る前に出しとかなきゃ駄目だろう、と思うのだが(←素人考えというものなのか?)。一応、お勧めの短編を挙げておくと、まず『読書の時間』。次が『オーバーラップ』かな。
勧めるだけなら後ろめたさはないけれど、暮浪として納得した上で勧められるとは言えないので、暮浪の負け。
二本目
次に『さんま』。これは上の一冊とは対照的に、自然に「幅広さ」が現れているので、とても好感が持てる。目黒三吉の初めての単行本だが、確か暮浪とタメ歳だったはずで、そういう人が「若さ」を押し出した作品を出してると、俺も頑張らなきゃ、と思うわな(←鬱状態でなければ)。この方は、今をときめく(というか、既に安定期に入ったかと思われる)平野耕太のアシ出身。絵柄にもその影響は見て取れるが、それ以上にギャグセンスへの影響が大きいだろう。『巨乳の国』の「ギャフン×3」なんかは端的な例だな。それでいてエロ絵エロ線もきちんと描けるのはポイント高し。ダーク系だろうがアッパー系だろうが、キレ気味の展開に比較的オーソドックスな落ちを持ってきているので、読んで「分かった気になる」というのも良い所だな。一番気に入ってるのは冒頭の「びわこさん」シリーズ2編だが、とりあえず買って損はないだろう。つうか買え。
てなわけで、無論暮浪の勝ち。ついでに付け加えておくが、これに収録されている短編の多くは「零式」(シュベール出版)に掲載されたもの。最近月刊化されたが、大暮維人や鬼魔あづさ等のベテランの起用と、二階堂みづきやこの目黒三吉といった地力のある新人を発掘とで、うまくバランスが取れている点は注目しておくべき。「快楽天」(ワニマガジン)の対抗馬一番手は、マジでこれだろうと思う。
三本目
最後に『触れていて。』表紙の絵柄に思わず惹かれて買ったが、収録作品を見る限り、絵柄はいまいち安定していない感じ。まだ成長の余地はアリ、といったところか。話作りの点では、ヒネりを加えよう、という努力が覗える点は素直に評価したい。が、ベタをもう少しきちんとやり切らないと、バランスは良いとは言えないままじゃないだろうか?先程「ベタも悪くない」と書いたニュアンスとは矛盾するように聞こえるかもしれないが、ヒネろうとして毎回うまくハマるわけではないのだから、「ベタをベタとしてやり切る」のは立派なことではあるのだ(そこに安住しては駄目だがな)。
ということで、積極的に勧められる材料がないため、暮浪の負け。
総評:一勝二敗(通算:二勝四敗)
今回は、あらかじめ広川と目黒を一冊ずつ買ってしまったので、残り一冊をどうするかでかなり迷った。二回目から冊数増やすわけにはいかないし。砂も新刊出してたようだし、「『女刑事ペルソナ』(高橋雄一郎、白泉社)は十分エロマンガじゃねえのか」とも思ったんですが。あ、個人的に一番の拾い物は『アガデベベ』(TAGRO、ふゅーじょんぷろだくと)。面白いけど勧められないね、とっくに絶版になってるし。見つけたらぜひ買っておきましょう。そんな感じだ。
第三回
さて、このコーナーってどの程度認知されているんでしょうか?身内以外からの反響というのがあった試しがないので(当たり前か)、勢いで始めてしまった暮浪としては戦々恐々としていなくもない、といった感じなんですが。とか何とか言ってるうちに春ですね。ではそろそろ、今回のラインアップをば。
『快感フルーツ』(河野シンタロヲ、桃園書房)
『ORIGINAL2』(山田太郎(仮名)、文苑堂)
『ウラ23区』(香愁、三和出版)
一本目
『快感フルーツ』だが、この作者、キャリアの割に(単行本は7冊目)話運びが下手。冒頭で説明セリフの応酬が繰り広げられる短編があるかと思えば、人物関係がきちんと説明されてないままプロットが展開していくため、ある段階でいきなり状況が把握できなくなる作品もあり……といった具合で、かなり読みづらかった。続き物として描かれている冒頭3編なんかはその典型だが、①主人公とヒロインの間に既に肉体関係がある、ということが説明されていない②「既に肉体関係が存在している」ことと、プロットの展開の契機とが、「矛盾する」とまでは言わないが、並立する必然性が無い③第2話・第3話で新たに現れる登場人物どうしの人間関係が、オチに絡んでくるらしいにも関わらず、不明確(つまり、きれいに「オチ」てない)……とまあ、これだけ問題点を孕んでいる。読んだ後で真っ先に「だから、何?」と思ってしまった自分に罪悪感を感じてしまったのだが、良く考えればネームの段階で修正させなかった編集部が悪いんだよな、これって?どうにも「詰め込み過ぎ」な印象があるのは、要するに「序盤できちんとした設定説明ができていない割に、盛り込むトピックが多過ぎる(後から増やし過ぎている)」せいだろう。エロゲーの雌キャラや声優からヒロインの名前チョッパッてくる暇があったら、やはり導入部分をスマートにこなせるようにならない限り、ブレイクは有り得ないはずだ。エロマンガで濡れ場の頁数を減らすわけにはいかないんだから。
つうわけで、暮浪の負け。
二本目
『ORIGINAL2』は、本来買うつもりじゃなかったんだが、ついついうっかりと。知ってる人は知っている「竹井正樹」氏(PCエロゲーの名作と「言われている」、『同級生』シリーズの原画家)の、同人誌作品を主に集めた単行本。買うのに結構躊躇したのだが、止めときゃ良かったろうか。まず、ストーリー面で見るべきところはない。どちらも二・三編ずつ見られる「近親相姦」とか「童貞・処女征服」といったネタは、字面でインモラルな感じが漂うせいか、読み手・書き手双方の嗜好として受入れられやすくはある。ただ、掃いて捨てるほど先行作品も多い、というのが実状で、題材の「字面が淫靡」というだけで読者を釣れた時代は、既に一昔前に終わっている。そこにヒネりと言うほどのヒネりも加えられていないのであれば、どうにも苦しいだろう。
ところで、同人誌では基本的に独力でネタ出しを行うせいもあり、同人誌の再録本を広げてみると、各編の製作時期がある程度の長期間に渡ることが珍しくない割に、ストーリーの展開も水準も同じような作品が揃ってしまう傾向があるように思われる。そんな傾向が、この作品集出は悪い方向で反映してしまった、と言うべきだろう。同人誌の再録を企画するなら、末広雅里の『KAAR』のように、連作として描かれたものでなければ面白いものにはならないだろうとも思う。単刀直入に言うならば、「企画として失敗」なのだ。
それでも、例えば「絵面で目を引く」といった売りがあれば良いのだけど、はっきり言ってしまうと、竹井氏の画風は既に周囲に埋没してしまっており、さして魅力は感じない。七-八年前ならこれで十分目を引いたと思う(だからこそ『同級生』は売れたのだ、シナリオにだってそんなに魅力はあったわけじゃないと私は思う)が、かつては「スマートさ」と好感を持たれていた要素も、今日となっては「中途半端な薄さ」として、かえって鼻に付く感じすらある。
つうわけで暮浪の負けだ負け。ああ畜生!
三本目
今回一番面白かったのは『ウラ23区』。ただ、ここで言ってる「面白い」と言うのは、トンでるネームにサイケな構図で「エロマンガ」の枠ギリギリまで肉薄している点が面白いのであって、それ以外に評価できる要素がある、ということではない。白状してしまえば、暮浪の負けなんですがね。
まず、モチーフとして「東京23区内各所の点景」がふんだんに散りばめられているのに加え、ストーリーの中でも東京生活者ならではの生活感・距離感・空気感、といった要素が所々に顔を出しているので、モチーフが置き去りにされていないのね。記号が、なまじ記号としての存在感が強すぎるがために、ストーリーの中で突出してしまったり、ストーリーの中で何ら有効に機能していない……そんな例は、どんなジャンルの作品でも見られること。具体的には、「浮いているトピック」とか「設定倒れ」ってことね。そこを消化はできているんだから、結局のところ各話の主題が良く分からないという欠点が大きすぎるにせよ、評価には値すると言えるはずだ。惜しむらくは、絵柄が少々古い感じがすること。仮に、十年前にこの作品集が出ていたとしたら、評価が相当高くなっていたのは間違いないところだと思う。個人的には、永井荷風の随筆集を(『断腸亭』でも良いけど)側に置きながら読んでみたくなった。
ともあれ、一般向きでないのは確かなので、負けは負け。
総評:三敗(通算:一勝七敗)
よりにもよって3連敗だったものの、『ウラ23区』はかなりヒネた人向け、ということにしておきたい。実は、月末にかなり良いタマを仕入れたのだが、既に枠が埋まっていたので第四回分に回さざるを得ず……というわけで、次回は期待して頂きたい。今回の負け分は取り返すつもりです。
第四回
そろそろあれ(←二度目)の心配もせにゃならん今日この頃なのではございますが、ぼちぼち参りましょうか。
『大天使の剣』(納都花丸、メディアックス)
『秘めごと』(田中ユタカ、雄出版)
『奉仕令嬢』(鹿島田しき、松文館)
一本目
さて、まずは『大天使の剣』。これは良かった。けど、ショタホモ漫画です……まあ、「ショタケット」の賑わいぶりや「白泉男児」の存在を見るにつけ、こうした(男性向けでもある)ショタホモ漫画の需要は、今後も多少は増すでしょうな。米倉けんごもこの間単行本を出してましたね。ただ、わざわざ「多少」と断っているのは、こうした作品を描く場合、「画力があること」が絶対に必要な条件だから。客を「引かせる」絵面では、こうしたジャンルは無理でしょう。
ところで、この『大天使の剣』ですが、話作りもなかなか良いのですよ。同人誌では作者が自ら「天使フェチ」と称してますが、主人公のキリエ君のいじめられっぷりと「惚れた弱み」っぷりにはもう悶えるしかない、ってな感じですか。この作品集では「少年天使」「悪魔っ子」をメインに据えた連作が核を為しているわけですが、巻末の一編や現在連載中の作品を見るに、そうしたガジェットだけで収まりきろうとしていない辺り、「話作り」にかける意欲を感じます。良い編集さんに恵まれれば、まだまだ伸びるんではないかな(ちなみに初出はビブロスの『カラフルBee』。同人畑からの新人発掘にはそこそこのノウハウのある雑誌だと思いますが、やはりと言えばやはり、といったところでしょうか)。
てなわけで、もちろん暮浪の勝ち。
二本目
で、『秘めごと』です。なんつうか、買ってみたら大半が既刊の再録だったりしたのですが、田中ユタカは一回くらい取り上げとかないと駄目でしょう、ってことで半ばコジツケ気味に。実は、暮浪がエロマンガを本格的に買い始めたのは、某書店で松文館の営業氏に「うちのオススメですよ」と田中ユタカを進められたのがキッカケだったんですよね。その意味でも、思い出の作家であるのです。最近は『ヤングアニマル』にも露出し始めてますから、知名度も上がってゆくのではないでしょうか。
で、作品なんですが、「プラトニックからエロスへの過渡期に特有な初々しさ」を徹底的に描き続けているひとですね。全部が全部、というわけではありませんが、漫画家版エロエロらぶこめメイカーの泰斗とも言えるのではないでしょうか(小説家なら雑破業)。おかげでネームが小っ恥ずかしいんだ。読み返すたびに赤面。でも、それを「描き続けて」いるんだからやはり大したものでして、「ひとまず一冊、田中ユタカ」は、幸か不幸かこのページを読んでいる方々全てに訴えておこうかと思います。
ついでながら、最初と最後はいつも一捻り加えてる辺り、話作りの実力も楽しめる辺りはポイントではないか、とも。密かにアングルや構図にこだわっている場合が多いのですね。エロ漫画の場合、普通に描いていくと体位以外でのアングル・構図のバリエーションが疎かにされがちなので、なおのこと注目してみても良いのでは、とも思います。
んで、とりあえずこれでも暮浪の勝ち。
三本目
最後に『奉仕令嬢』。もともと画力には見るべきところがあった作家さんでして、話作りも悪くないものですから(確か、以前は少女漫画畑の出身であったはず)、いつ単行本が出るのかと心待ちにしていたのでございますな。最近では『快楽天』あたりにも露出し始めているので、今後の期待株といったところでしょうか。ちなみにこの本は、今じゃほとんど目にすらしない、A5版丸背エロ漫画雑誌で連載されてた作品を集めた短編集です。
で、絵柄なんですが、初期(この単行本では後半)の作品は「白すぎる」。背景がスカスカです。ま、人物の細かい造形は結構力が入ってますので、ほとんど一人で描いてたからじゃないか、と考えるのが妥当なのかも。
さらに言えば、初期の作品はそれこそ『奇譚クラブ』にでも出てきそうなくらいに緊縛・監禁・制服といったフェチテイストに溢れかえっていたりします。それも悪くはないですが、画力が付いてこないとどうしても苦しいんじゃないかしら……ですが、この辺りは単行本前半の各作品では良い感じに「こなれて」きているので、一作家の作風の変化ぶりを如実に伺えるという点では面白い一冊では、と。個人的には"fur freak free"が大好き。
価格設定自体が安いので、気軽に勧められなくもないのですが、単行本一冊の中でも絵柄や作風のバラツキが大きいという点を加味して、評点自体はマイナス。そんなわけで、暮浪の負け。
総評:二勝一敗(通算:四勝八敗)
今回は初の勝ち越し。今後も続けていきたいですな。ただ、松岡弟君から一冊預かってた漫画があったのですが、それは今回は見送らせて頂きました。ちょっとテンション低落を長引かせてしまったために時間が無くなったせいです。すみません。次回に「特別枠」を用意できれば、と思っておりますので、お楽しみに。
第五回
色々ありましてしばらく勝手に休載しておりましたが、松岡君から直々に「やれよ、バカタコ!」とのお叱りを頂きましたので、とりあえず復活させてみることとした次第です。ほんじゃま、普通に始めてみましょうか。
『蝶美』(けんたろう、司書房)
『扉をコジあけて』(ZERRY藤尾、笠倉出版社)
『PALLADIUM GARDEN』(的良みらん、ヒット出版社)
一本目
まず『蝶美』。描画のエロ線が妙に印象に残りました。初単行本だけに、作中でそれなりに絵柄は変わってるんですが、「大暮維人の影響が色濃い感じ」と書けばお分かりの方はお分かりではないかと。
一方、話作りでは、特段ヒネりやイジりといった要素が突出しているわけではなく。オーソドックス、というよりは、無難にまとめようとしている、ってな感じ。ただ、それほどベタ臭くはないです。ただ、今後の課題として真っ先に挙げられるのは、作画・作劇上の細かいポイントをきちんと描ききることでしょう。例えば、「燦爛」で出てくるキャラの服装ですけど、はっきり言って崩し過ぎ。「考証」とまでは言わないけど、こういうところでそれなりに「らしい」描き込みをしていくと、印象がかなり変わってくるはずです。
全体としては、少なくとも不可は無し。今後のブレイク期待で買うのは一興。薄めの奴になら勧めても良いけど、まあ「勝ち」と言えるほどではない。よって暮浪の負け。
二本目
『扉をコジあけて』。相当トンガッた奴向けかとも思いますが、上で「負け」にした分も合わせて「勝ち」にしちゃっても良いだろ。必見なのはVol.1/7/8。村松君の追い込みっぷりが何より素晴らしいし、それをVol.7/8と2話がかりで落としに行ってるのは見事。と思う。
ま、この作者は普通に漫画描かせても面白かったりします。一般誌でお目にかかれないのは残念ですが、興味のある方は「WEB胡乱堂」なんぞ覗いてみて下さい。いいよー、「自作王」。てなわけで、これは勝ちだ。
三本目
最後に『PALLADIUM GARDEN』。これで単行本が4冊目だったか。確実に絵柄は洗練されてきてるけど、作風は「そっち方向に落ち着くの?」という印象が。初単行本『異形景色』は文句無くオススメなんですが、あのときの「トンガリっぷり」が「普通にオタク臭い」ところに落ち着いちゃってるような気が。作者も好きで描いてるらしいのがちと幻滅っつうか。私も含めて、別に「メイド萌え」でない方々には評価が難しいのじゃないかなあ……ただ、ストーリー展開ではそれなりに要所が押さえられているため、ただ単に「記号の羅列」に堕していることもなく、やはりそれなりに安心して読めはします。
メイド好きがこんなページを読んでるわけはない、という勝手な先入観に基づいての総合評価としては、話作りではそれなりにまとまってて悪くはない感じ。ただし、「暗殺エキスパート少女もの」として読むなら(←嫌な趣味だな)かなり良い感じ。絵柄は、キャッチーというほどではないが無難。個人的にはガッチガチサイバーパンクを描いて欲しいので、その辺の期待料を差し引いて負け。
総評:一勝二敗(通算:五勝十敗)
負け越しではあるんですが、ちょっとした匙加減で「3戦全勝」にできたかも、ってな感じ。裏を返せば、全部それなりにオススメではあります。まあ、今回はリハビリ代わりみたいな感じで、ボリュームもいささか物足りない感じですけど、ひとまず勘弁して下さいまし。それでは。
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